幼稚園の暴れん坊
幼稚園に、ものすごく荒れている子がいる。
誰彼構わず手を出して、トラブルの連続。
けんかの理由は本人なりにあるようだけれど、世間的には理解されない類だ。
けんか、と書いてしまったが、基本的には一方的。他害の方がしっくりくる。
被害に遭う子は特に何も悪いことをしていない。
何が気に入らなかったのか分からないことで頭に血が上り、すぐに向かっていく。
大人から見てもきっかけが明確でないのだ。
気に入らないと、すぐに手が出る
むしゃくしゃした時の反応は、即!他人への攻撃(噛む、引っ掻く、叩く、蹴る、物を投げる、等)。
ひっくり返ってワーワー泣く、先生に言いつける、みたいな反応は皆無で必ず他の子を巻き込む。
とにかく攻撃の一手。
それも一度火が付いたら止まらない。
噛めばスッポンのように離れないし、引っ掻くときも両手で連続攻撃だ。
顔を蹴られて前歯の神経が死んだという子もいた。
狂暴は正気を失ったように暴れる、ということらしいけれどまさにその様。
凶暴でもある。
他の子への影響
そんなわけで、被害にあった子のケガは必然的に大きい。
離れて遊んでいた子のところにも近寄って行って、急に攻撃。
やられる子供たちは理由も分からず、不安が広がっている。
とっさに逃げることもできず、子どもにはどうしようもない。
成長への期待?
成長するにつれ落ち着いてくることを誰もが期待して見守っていたけれど、入園してからずっと、けんかっ早さは変わらないのだ。
それでも入園したときはまだ良かった。
他にも同じように元気いっぱいのヤンチャ坊主みたいな仲間がいたから。
みんながみんな、団栗の背比べなら、お互いさまも成立する。
けれどだんだんと他の子は年齢なりの成長を見せて、言葉の面も友達付き合いも上手になってきて、今では一人だけ目立ってしまっている。
本人も限界?
コミュニケーションがうまくいかない経験が続き、本人も居心地の悪さがあるのだろう。
ますます難しい姿を見せるようになり、トラブルが増えた。
完全に悪循環にはまっているように見える。
先生たちは本当によく対応されているけれど、
ここまでくると、もう成長にかけてのんびり見守っている段階は過ぎていると思う。
周りの子にも、当の本人にも、これまでのやり方を続けるのが効果的とは思えない。
今のままではみんな辛い。
我が家の幼稚園児もまた怪我をして帰ってきた。
成長につれトラブルは減るどころか、むしろ増えているのだ。
親は意外と悩まない 、なぜならば
これだけトラブル続きだと親御さんはさぞかし辛く、悩んで、謝ってばかりだろう。
自分だったら申し訳なくて居てもたってもいられない。
そう想像するかもしれないが、 実際はその通りではない。
あれだけのケガをさせても謝罪やら何やら、特にない。
謝るというスキルを身につけていない方々なのかもしれない。
謝る以外にも色々と、他の人が当たり前にできることが(挨拶する、計画を立てる、確認、報告、相談するなど)、ご夫婦とも困難に見える。
先生や、付き合ってくれていた心の広いママ友の常識的な助言も全く響かない。
余計なお世話だけれど、それでよく社会人として勤まっているな、と不思議に思ってしまう。 勤まっているのか本当のところは知らないけれど。案外仕事では上手く周りとコミュニケーション取れていたりするのだろうか。
とにかくそんな態度もあって、ますます孤立していく。
前述の心の広いママ友(とってもいい人、私の友人)も、ついには離れてしまった。
せっかく力になってくれる人がいたのに、もったいないと思う。
アドバイスを実践すれば周りの印象が多少変わったり、子育ても少しは楽になったりするだろうに。
ズバリ、患者さんだろう
このままでは子どもが鼻つまみ者になってしまうじゃないか。(もう既に・・・)
浮きまくっていることは確かだ。
親が子どもの足を引っ張ってどうするんだ。と内心思う。
でも、親御さんにはまともに対応「できない」のかもしれない。「しない」ではなく。
あれで本当に精一杯「自分ではやっている(つもり)」な可能性もある。
世間的にみると「どこが?」「全然やっていない」にしか見えないけれど。
恐らく(というかかなり高確率で)親子とも患者さんだ。。
なぜなのかよく分からないで背負ってきたこれまでの人生の困りごとには原因があって、専門家の支援を受けられる対象であることを知らない、自覚のない患者さん(だろう)。
どうしようもないわけではない
クラスメイトの保護者で、加害児・被害児という関係では、不誠実な態度に忌々しさを感じるが、STとしては親子そろって大変個性的な脳をお持ちだと興味深く思う。(とはいえ、病院にいればこういう脳の人には沢山出会うから、とりたてて珍しくもない。)
(仮に考えている通りだとしたら)端的に言って生まれつき脳の働きに幾分かの不具合があり、こういう困った事態を招いているのだ。(もちろん、他にも色々と可能性はある)
健診で指摘されたり(されているはず)、周囲の人のすすめで病院を受診し(まずこのタイプは自覚が無いから受診まで一筋縄でいかないのだけど)、医師からリハビリ(療育)オーダーが出れば言語療法は必須のタイプだ。OTも必要だし、PTもこの子の役に立つ。
勤務先にこの子が来たら、まだ色々と手はあるのになぁ、と思ったりもする。
少なくとも、この親子の生きづらさ(心の赴くまま自然にふるまうと、周りと上手くいかない、等)を理解して、困っていることが少しでも解消されるように力になってくれる人はいる。
まだ出来ることはあるのだ。
然るべき専門家につながることを切に願う。