ママちゃんの自由帳

リハビリ専門医と言語聴覚士がより楽しい人生を送るために考えていることを綴ります

学校再開と子どものコロナリスク許容度の話

 こんにちは。4月になりました。子どもたちも新学期の季節です。
 先日は東京で、4月5日には千葉県が始業式延期の発表となりました。それ以外の都市も予定通り始業式を行うか、延期するか関係者は悩んでいるようです。

今のところコロナウィルスにより日本人の子どもが命を落とした話は聞こえてきませんが、ヨーロッパや韓国、中国などでは何例か報告されています。だから日本でも今後はどうなるかはやってみないと分かりません。そのため日本でも緊急事態宣言を出す検討を始めたようです。

 

 

学校再開で困る人と学校再開されないと困る人

 コロナウィルス感染を防ぐためには換気の悪い密閉空間、多数があつまる密集場所、間近に集まる密接場面のいわゆる3密を避けるように言われています。
 

 そのため新学期開始の延長を訴える親が沢山いるようです。実際学校は注意しているものの3密を避けることは難しいでしょう。だからどもたちの健康不安を理由に新学期開始延期を訴えることは正しいことと思います。ただ新学期を延期して子供を学校から隔離することが出来るケースは、片働きあるいは共働きでも祖父母など誰かの手助けが得られる場合など限られた方のみです。
 

 しかし共働き世帯で子どもがいて夫婦とも仕事が休めない場合はそうはいきません。子どもを誰かに預けなくてはなりません。共働き世帯の方々は既に保育所だの学童だのに預けています。保育所や学童は3密を満たしている場所も少なくないと思います。つまりすでに子どもを三密に近い場所に預けていることになります。この場合学校が始まっても預け先が変わるだけで子どもが受けるリスクはあまり変わりないのではないでしょうか。
 

 共働き家庭世帯が片働き家庭の世帯数を上回って久しいです。そのため学校再開で困る人は案外少数派になるかもしれません。さらに夫婦の片方が仕事を休めば収入は減るしひいては経済活動が低下するので共働きの多くは、さらには自治体や中央政府の方々は新学期開始延期をしたくはないのが本音でしょう。
 いったいどうすればいいのでしょうか?

コロナリスクの実際

マスコミがセンセーショナルに報道するため目立ちますが、子どもがコロナで亡くなるケースは極めてまれです。ただ重症化するケースはかなりあります。
 

 上海交通大学医学院小児医学センターの童世廬教授のチームが中国でかかった18歳未満の1月中旬から2月初旬にかけてコロナウィルスに感染した2143人の疫学調査を行ったデータがあるようです。
 

 そのデータによると重症化(酸素マスクが必要なレベル)率は1歳未満が10.6%、1-5歳が7.3%、6-10歳が4.2%、11-15歳が4.1%、16歳は3.0%となっています。確かに成人患者の重症化率18.5%に比べて低いものの小学生だとクラスメイトに一人くらいは入院が必要な計算となります。ただしこのデータをそのまま自分の子どものケースに当てはめることはできません。   
 

 これは調査時のデータでその後退院したのか重症化したのかは分かっていないとか、後ろ向き調査なので都合のある程度良いデータだけを引っ張ってきた可能性があり得ることなどの論文そのものの問題があります。例えば調査時は軽症でも急激に悪化するような場合のデータがあまり入っていません。
 

 もう一つ考えなくてはならないのは、自分の子どもに入院が必要になった時ベッドがあればいいのですが、今後急激に患者数が増加した場合ベッドが足りず十分な治療を受けられなくなる可能性についてです。実際東京などではベッド数の限界が近づいているようです。
 

 いくらデータ的には助かる可能性が高くてもとはいってもベッドが無ければ意味がありません。
 
まとめると
① コロナウィルスで症状が出る場合、幼稚園児はクラスに2人、小学生は1人くらい入院が必要になる可能性があるただコロナウィルスに接触しても感染しなかったり症状が出なかったりする人もいるので実際はもっと少ないだろう。
② コロナ肺炎で入院が必要になった時にベッドがあれば助かる可能性が高いが、ベッドがなく入院できなければ子どもは苦しむし、命を落とすかもしれない。

 

子どものコロナリスクを知ったうえでどの程度のリスクをとる?

  子どもがコロナウィルスに感染した場合ベッドがあれば助かる可能性が高いですが、今後ベッド数が不足すればどうなるかは分かりません。また助かったとしても酸素マスクが必要になるくらい重症ならば相当苦しみます。そうした子が最大クラスに1-2人も出るならばなんとかしたいと思うのが親心でしょう。
 

 全てを子ども優先にできる方は新学期延期してほしいでしょうが、諸事情でそれが出来ない方もたくさんいらっしゃいます。そして我が子が入院する確率が最大数パーセントなら気にならない人もいるかもしれません。
 

 つまり、子供のコロナ感染に対してどの程度のリスクをとるかというのはその人の状況や思想、価値観などが複雑にまじりあって決まるものなのでどれが正しいということは他人が決めることはできないでしょう。
 

 ただ、新学期延長を優先したい人が沢山いることや、学校や保育所の3密を出来るだけ緩和したほうがイイことを鑑みると新学期延長してほしい人は自宅で子どもを見る、学校に通わせたい方は通わせるといった感じにすることが一番いいと思います。
 

 ただ僕が一番気になったのは、政府や自治体が早く決めてくれと言った意見が大多数であったことです。正しいことは人によって違うかもしれませんが、同時に自分が正しいと思うことを選択する責任をご自分でとるつもりがある方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか?

 地方自治体が新学期の延長をしないのなら親、つまりあなたが子どもの登校自粛を決断すべきなのではないでしょうか。

 決められない政府や自治体も問題ですが、子どものことも含めた大事な判断を政府や自治体の指示がないと動けない国民がこういう国をつくり上げたともいえるでしょう。。