ママちゃんの自由帳

リハビリ専門医と言語聴覚士がより楽しい人生を送るために考えていることを綴ります

小学生男子、なぜ叱られても高いところに登り続けるのか?原因は「感覚」

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こんにちは、リハママです。

文化祭の練習もいよいよ大詰め、子ども達も先生も一生懸命に練習に取り組んでいます。

そして本番が近付けば近付くほど、先生に叱られる子ども達の様子が耳に入る今日この頃。。。

今日はそんな子ども達のお話を、感覚の観点から見ていこうかと思います。

 

  

毎日叱られている子ども達

 上の子の同級生の元気な男子たちは、毎日毎日毎日毎日毎日毎日文化祭の練習で何かをやらかし、先生にこっぴどく叱られているそうです。

もちろん、彼らは文化祭の練習以外でも叱られているのですが。

一体何をそんなに叱られるというのでしょうか?

 

まーよくもそんなに毎日色々やるわね。。って思わず感心してしまうくらい、細かく挙げればキリが無いのですが、「小学生のやんちゃなダンスィなんてそんなもの」で、いたずらは当たり前。

普段穏やかな先生方も声を張り上げなければ収まらないくらいに、子ども達はやりたい放題・暴れ放題、なのだとか。

 

そして、ノラネコぐんだんよろしく、お決まりの

 

「あなたたちは〇〇をして、いいと思っているんですか!!」

 

「・・・いいと思っていません」

 

みたいなやりとりの繰り返し。

じゃあなぜやめないのでしょう。

 

ここでは毎日繰り返されていることの一つ、「高いところによじ登って叱られる」ケースを取り上げてみようと思います。

 

高いところによじ登る

文化祭の練習で高いところによじ登って叱られるってなに??と思われた方に、状況の説明をしましょう。

 

劇の練習中、出番の子達は舞台の上、まだの子達は舞台の袖で待機しています。

その待機しているときにノラネコぐんだんダンスィ達は舞台の袖で暴れるのです。

出番をただじっと待つには退屈ですし、友達とお喋りをして楽しくなってどんどん声も大きくなる。

すると指導している先生方に、「観客席までお喋りの声が聞こえています!」と叱られる。

 

怒られたけど、でもやっぱり暇だな~、練習はほっぽりだして、遊びに行こう!!一人が走ると、他の子も走る!!マラソン大会開始・・・ドドドドド・・・

体育館の出入り口で見ていた先生に捕まる。仕方なく、また舞台の袖に戻る。

 

次は・・・舞台袖のスペースにある階段の手すりによじ登り、大騒ぎ。

当然、危険だし、先生に叱られる。

 

はい、こんな調子で階段の手すりによじ登って立つんですよ。滑ったり、ジャンプしたりで周りにいる子達も巻き込まれそうで危ない。想像する大人が怖いですね。

けれど彼らにしてみると、can not help ~ing、よじ登らずにはいられないんです。

 

なぜ高いところ危ないところを好むのか?

なぜわざわざ、高くて不安定で落ちたら無傷では済まないであろう、階段の手すりなんかに登って立つ(だけでなくふざける)のか?怖くないのか?

それは、体がそういう仕組みになっているから、と言いましょうか。

必要だからやっている、と言えばいいかな。順に説明しましょう。

平衡感覚や固有感覚を求める

そういう仕組みなのだと書きましたが、臨床的には感覚入力のアンバランスさとでも言ったら良いでしょうか。平衡感覚や固有感覚について知ることで説明が出来ます。 

平衡感覚

 簡単に言うとバランス感覚。体の向きや動き、姿勢を耳(の奥の三半規管と耳石器)で感じる。回転や揺れ、加速や減速、重力など。

 

固有感覚

 筋肉や関節の位置や動きの感覚。お母さんの肩を揉んであげるときはグイグイと強く!卵やお豆腐を持った時には潰さないようそーっと、という力加減の調節も固有感覚のなせる業です。

 

自己刺激

 私たちはボーっとして特に何もしていないようでも、実に多くの感覚情報を外界から取り入れて脳に送っています。五感もそうだし、五感には含まれない、平衡感覚や固有感覚などの普段は意識にのぼることもない無意識の感覚情報もあります。

 

 今、これをするときに膝の関節は〇度曲がって、どのくらいの速さで腕を振って、体は前方にこのくらい傾いて、この筋肉はこのくらい縮まって、反対側はこれだけ伸びている。

などとわざわざ考えなくても、私たちは重力に抗って姿勢を保っていることが出来るし、「コップでお茶を飲もう」「お財布をバッグにしまおう」とすれば、細かいことを意識しなくても体が勝手にちょうど良い具合にやってくれていますね。

 

これらの沢山の感覚は、私たちが生きていくうえで欠かせないとても重要な役割を果たしてくれているのですが、なんだかちょっとうまく脳に伝わらないことがあります。

 

感覚情報がこんがらがってしまい、すっきりと上手く利用できないとき、

・入力されたほどには感じなかったり

・少しなのにとても多く感じたり

・いつでも分かるわけではなかったり

・他の刺激と間違えやすかったり

・なーんか調子が悪かったり

こんな風になることがあるのですね。

 

ちょっとした不具合でうまく届かなくて「おや?刺激が足りないぞ」と脳が感じれば、仕方が無いので足りない分の感覚は自分で補ってあげることになりうるのです。

それが自己刺激です。

 

どうやらノラネコぐんダンスィ達は高いところに登ることで、平衡感覚や固有感覚の不足した刺激を補おうとしていたようですね。文化祭の練習はしていなかったかもしれないけれど、混乱していた感覚のシステムを何とか上手く働かせられるように、自主練習をしていたのです。

 

高いところに登る理由と対処法

高いところに登ると得られるもの

  1.  普段は無い刺激で楽しい。バランスをとる遊びとしてやっている。
  2. 刺激の量が増えて脳の覚醒レベルを高められる。
  3. 感じにくい感覚を高めるための自主練習(自己刺激)。 

このような理由で高いところに登っている可能性があると考えられます。

対処法

 なぜ高いところに進んで登るのか仕組みが分かったので、どうすればいいかも自ずと答えが出ましたね。

  1.  文化祭の練習の前に
  2. 彼らが求めている刺激を安全に入力すること

を保証してあげましょう。

 

文化祭の練習前がカギ

  文化祭の練習をちゃんと頑張ったらご褒美に遊んでいいよ、ではなくて、先に脳にしっかり伝わるように感覚を入力する活動をさせてあげましょう。

できればたっぷり身体を動かしてから文化祭の練習に臨める環境を作ってあげるといいと思います。練習前に体育の授業をしたり、長い休み時間を挟んだり。

求めている刺激を安全に入力

さすがに階段の手すりは危ないので、もっと安全な遊びで感覚入力を保証します。

例えば、登っても大丈夫そうな木があれば木登りをしたり、ブランコをしたり、トランポリンやラートを出してあげたり。鉄棒でぐるぐる回ってみてもいいですね。

 そうすると、「足りない→自己刺激」とならずに文化祭の練習に取り組みやすくなると思います。

 

最後に 

感覚について知ることで、一見大人からすると理解不能だったり困るような行動をする子ども達の見え方が、少し変化したのではないでしょうか。

親御さんのしつけのせいでもないし、子ども達が分からず屋だからでもありませんでしたね。

 理解者が増えるといいな、と思います。