こんにちは、リハママです。
下の子を幼稚園に送っていく道すがら、「あっ!パンのくるまだよ!」と教えてくれました。見ると大きなトラックに〇〇〇〇〇パン、とメーカー名が記されているではありませんか。どこにもパンの絵は描かれておらず、まるで文字が読めているよう。
子育て中にこのような子どもの姿を見たこと、きっとあると思います。
これ、言語聴覚士の世界では「エマージェントリテラシー」とか「プレリテラシー」と言います。
今日は子どもの読み書き能力の発達についての話です。
リテラシーとは?
ユネスコの識字能力の定義(UNESCO,1990)に「日常生活の中で短く単純な文を理解しながら読んだり書いたりできること」とあるように、STは狭義の「読み書き能力」を示す言葉として使うことが多いです。
広義には読み書きを通して情報を得たり、自らの目的のために整理、活用するといった、生きるうえで必要な「文字を使用する広範で複雑な能力」を示しています。多くの方にとってはより発展した使い方での〇〇リテラシー(メディアリテラシー等)の言葉の方が馴染みがあると思います。
エマージェントリテラシー、プレリテラシー
文字を習得する前の子どもに見られる、「まるで読めているような」様々な行動のことで、冒頭に述べた(実際には文字は読めていないはずだけれども)パンの車だ!と分かったり、貰ってきたプリントを熱心に見つめ「〇〇〇してくださいっていうおしらせだって」と解読してくれたり、なんなら何度も読んでもらったお気に入りの絵本の筋を覚えていて自分でページをめくりながらブツブツと呟いていたりといった姿が当てはまります。
私は入学前の小さな頃に新聞を読んで「神童だ!!」と祖父母を驚かせたらしいのですが、まさしくエマージェントリテラシーです。ちょうど良いタイミングでめくったり、文字を目で追っていたりするので本当に読んでいるように見えるのですね。
夢を壊してごめんよじーちゃん。
子どもの読み書き能力の発達について
読み書きできるようになるのはいつ?
子どもや子どものお友達を見ていると、大人には読めない何かが書かれているお手紙を交換し合ったり、道端の看板を片っ端から「あれなんてかいてあるの?よんで??」とせがまれたり、だんだんと文字への興味が芽生えてきている様子です。
ではいつ頃読み書きが出来るようになるのか?と言うと、個人差が大きいので大まかな目安として、5歳後半でひらがな(清音、濁音、半濁音、撥音の71文字)のほとんどが読め、半分位書けるようになると言われています(島村、三神、1988)。また、年々ひらがなの習得が早まっているとの報告もなされています。
赤ちゃんだった子どもが、言葉を話すようになるときと同じで、ここでも言語発達の法則「わかるのが先で、言えるのが後」です。理解は表出に先行する、文字言語に置き換えれば「読めるのが先で書けるのが後」なのです。
読み書きを支える力
早期に読めるようになったから良いとか遅いからダメとかそういうことではなく、大体において、機が熟し「その時」が来たら出来るようになることって沢山あります。時間が解決するというものです。
読み書きに関しては関連するスキルが複数あり、専門的には音韻意識や音と文字のつながり、語彙、読解、視覚性記憶span等が挙げられます。
まだ読み書きの土台となるような能力が十分に育っていないときに、頑張って(頑張らせて)いくら文字を教えようとしてもお互いに苦しいだけです。
学齢期になると「学習」として意識的に努力をしてより複雑で高度な読み書きを身につけていくことになりますが、幼児期にも 子ども達は日常生活や遊びの経験の中で、文字に親しんだり、読み書きをするための土台となる機能を育んでいます。
昔からある遊びでは、じゃんけんぽん!で「ち・よ・こ・れ・い・と」と階段を上り下りしたり、「お・せ・ん・べ・お・せ・ん・べ・や・け・た・か・な」と掌をひっくり返したり、しりとりをするのにも、その要素が含まれています。
すごいですよね、研究が進み色々なことが分かるようになるずっと前から、誰に教わったわけでもないのに自然と発達段階を上る準備をしているのですから。
上手くできているな~と感心します。
終わりに
我が家の幼稚園児も本人なりの読み書きをしていてエマージェントリテラシーの段階を迎えています。きっとそう遠くない未来に、発達の階段をまた一段上る日が来るでしょう。子どもはあっという間に成長してしまうので、見逃さないようにじっくり言葉を観察しながら「もうしばらくかかるな」「まだだな」と「その時」を楽しみに待ちたいと思います。